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2006.04.05

ガザの危機--「一方的撤退」の実相

Posted by:情報センター・スタッフ

 ガザ地区からイスラエルの「一方的撤退」がなされて、9ヶ月が過ぎた。イスラエル軍とユダヤ人入植地がなくなり、ガザは「自由」になったはずだった。
 だが、現実には、ガザは疲弊の度をますます高め、人びとの貧困化は限界に達している。昨日のハアレツの報道によると、国連までが人道的な緊急支援をしなければならないほどに、最低限の食料さえもが不足しているのだ。
 ガザ地区とイスラエルとのあいだで物資をやりとりするためのカルニ検問所が、「治安に対する懸念」のために長期的に封鎖され、また、ガザ地区からイスラエルへの労働許可は、将来的にはゼロにする方向にあり、すでに著しく制限されている。確かにガザ地区内部にはもはやイスラエル軍は常駐せず、また武装した入植者からの嫌がらせもない。それをイスラエルは、「占領の終結」であるかのように喧伝していたが、現実にはガザの「監獄化」は何も変わっていない。
 「撤退」と同時に、イスラエルの企業と入植者によってつくられた工業団地と農地も撤去され、そこで働いていた数千人のパレスチナ人の雇用は失われた。他方で、ガザからイスラエル側には働きに出られず、イスラエルとのあいだでは、物資の運び込みも、商品の出荷も遮断され、経済活動は停滞を極めている。イスラエルを挟んで西岸とのあいだの通行と取引についても同様だ。
 加えて、ハマス政権誕生に対するイスラエル政府の「集団懲罰」で、イスラエルがパレスチナ自治政府に代わって徴収している税金も、自治政府への移転を停止され、自治政府の財政は完全に破綻してしまった。
 そして、相変わらず、陸と海と空からはイスラエル軍ががっちりとガザ地区の監視を固め、「何か」があれば、すぐさま軍がガザを急襲する。
 占領はまったく終わってはいない。そればかりか、イスラエルがしたことは、一方で「監獄」としてなお管理下に置きつつ、他方では「手を離れた」として責任を放棄することであった。

 二つのことが懸念される。ひとつには、このガザの状態がいつまでもつのか。もたなくなったときに、どういう形で爆発するのか。もうひとつは、いまイスラエルの政治家らが叫んでいる「西岸地区からの一方的撤退」もまた、同様の結果になるのではないか、ということだ。

【追記】
 4月7・8日のガザ空爆で、計14人のパレスチナ人が殺害された。この先まだ空爆は続くであろうし、死者も増えるだろう。「撤退」をしたはずのガザで起きていることを直視すれば、イスラエルの政策が自ずと見えてくるだろう。カディマと労働党の新政権は断じて和平派などではありえないし、「撤退」などという言葉に惑わされてもならない(メディアはもうこの言葉を使うのをやめるべきなのでは?)。(4/9)

【追記その2】

【追記その3】
 とうとうイスラエル軍が、昨年の「一方的撤退」後、初めてとなる「陸上侵攻」をした(大規模なものではなかったけれども)。もちろんこれまで何度となく空爆をしていたし、そもそも「いつでも侵攻可能」というのもわかっていたことなので、いまさら驚くことではないかもしれない。今度の「初侵攻」も、「撤退」の欺瞞を改めて確認したということであり、今後もおそらく繰り返されるだろう侵攻のリハーサルといったところだろう。(4/14)

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