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2006.04.17

怒りのコラム、ギデオン・レヴィ「テロリストはどっちだ!」

Posted by:情報センター・スタッフ

 このところのイスラエル軍によるガザ攻撃は、死傷者数の数もさることながら、「一方的撤退」議論との不整合など、その論理的破綻があからさまになっており、こんなことのためにパレスチナの人びとが、そして子どもまでが殺害されていることを思うと、本当に酷い話だと思います。
 そこで、イスラエルのメディアのなかで憤りを隠さなかったのが、ハアレツ紙のギデオン・レヴィ記者です。タイトルからして「誰がテロリストなのか?」。おそらくこういう矛盾の指摘とかレトリック批判などは何度も繰り返してきたことだろうと思うのですが、この機会にレヴィのコラムを紹介しつつ、イスラエルの「撤退」論議のイカサマぶりを確認しておこうと思います。
 昨日(16日)のレヴィのコラムの概略です。

「イスラエル外相のツィピ・リヴニは、国内外でのインタヴューでイスラエルの軍事行動を正当化し、『民間人への攻撃はテロであり、戦闘員への攻撃とは異なる』と繰り返している。その論理に従うなら、3人の子どもを含め18人も殺害したイスラエル軍のガザ攻撃は、イスラエルの国家テロではないのか。人口密集地へ爆撃をしておいて、子どもを意図的には殺害していないなどとはぜったいに言えない。
 この空爆の責任者は、端的に『戦争犯罪人』とみなすべきだ。リヴニ外相自身の言葉では『テロリスト』だ。それが国家の名前で行なわれたのであれば、それは武装集団によるもの以上に悪質だと言うべきだ。
 イスラエルは、こうした攻撃でプレッシャーをかけることで、カッサム・ロケットの発射を阻止すると言っているが、虚しい主張だ。何十人ものパレスチナ人が殺傷されているときに、武装組織のリーダーが攻撃をやめるように呼びかけたりはしないし、平和主義のパレスチナ人だって体を張って発射を阻止することなどできはしない。無実の子どもを殺害することが、どうしてカッサム・ロケットを止めることになると言うのか?
 ガザを監獄化し包囲攻撃を継続することは、イスラエル自身の利益に反することは明らかだ。こんな強硬政策はハマス支持者を増やすだけだ。絶望した人びとに対して、むしろ最後まで戦うことを決心させるばかりだ。
 逆に、パレスチナ人に希望を与えること、例えば、援助と投資によってガザの市民の貧困から救い、選挙で選ばれたパレスチナ人の代表と話し合うことのほうが、はるかにロケットを止めるための理屈に合っている。ガザへの空爆をやめ、ガザ包囲を解き、ガザと西岸の往来を認め、イスラエル国内での労働を受け入れ、ガザに空港と港湾の建設を許可することこそが、希望の種を蒔くことなのだ。そしてそうした希望があるときのみ、パレスチナ人は自らロケットを排除し、自ら変わることができる。
 ところが実際にイスラエルがしていることは、正反対に、暴力をいっそう強化することだけだ。カッサム・ロケットがあるからと言って、ガザの人びとを空爆で脅かし殺害することは、まったく正当化できない。国家の治安をかえって危機にさらしている。イスラエルの政策はまったく転倒している。逆のことをしなければならない。」

 と、大雑把にこんなところです。
 こんなことはわかりきっていることのはずです。おそらくレヴィ記者も、「どうしてこんな簡単なことが分からないのか!」と、苛立ちながら書いていたことでしょう。イスラエル自身の、イスラエル人自身の安全のためという、シオニストの論理にさえ適っていないのですから、イスラエルのガザ政策はどの住民の利益にもなっていない。ただ攻撃を継続させておきたい国家の利益、軍事産業の利益だけでしょう。そしてより穿った見方をすれば、「紛争」を存在させ続けることによって、パレスチナを貶め続けたい、「テロ」のレッテルを貼り続けたい、「一方的撤退」を正当化したい、そして自らの軍国化政策を維持したい、そういうことなのだと思います。

【追記】
 こう書いているそばから、今日もパレスチナの武装セクトによる自爆攻撃がテルアヴィヴであり、少なくとも9人が死亡、60人以上が負傷しました。レヴィ記者が書いているとおり、イスラエルの政策は、パレスチナ側の暴力を煽るばかりで、イスラエル市民をも犠牲にしています。まさに書いているままです。

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