パレスチナ情報センター

Hot Topics

2006.05.06

一人のタクシー運転手の死

Posted by:情報センター・スタッフ

 5月5日付けハアレツによると、4日、西岸北部のナブルスの郊外で、一人のパレスチナ人タクシー運転手(37歳)が、イスラエル軍によって射殺された。「検問所近くの進入禁止エリアに入ってきたので撃った」というのが兵士による説明だが、目撃者の証言によると、タクシーを停めて車から離れたところで射殺されたとか、あるいは医師の証言によると、銃撃は背中から受けているとか、兵士による説明とは矛盾することが多い。
 事の真相までは分からない。ただはっきりしていることは、彼は自宅のトゥバス(ナブルスの北側)近く、あるいはその周辺からナブルスに向かう客を拾って届けるタクシー運転手であり、彼はそこで日常の仕事をしていたにもかかわらず、外からやってきて勝手に検問所を設置したイスラエル兵によって、検問所の近くにいたというだけで射殺されたという事実だ。
 つまり、問題の本質は、このパレスチナ人運転手は、車に乗ったまま検問所に近づいたから狙撃されたのであろうと、車から降りたところを背後から射殺されたのであろうと、そこに暮らすパレスチナ人であるがために、入植地によって、そして入植地を守る占領軍によって、殺されたということだ。彼の側に不法行為があったわけでもなければ、不注意であったということでさえもない。彼は地元住民であったから殺された。これが占領の本質だと思う。
 空爆があったわけでもないし、目に見える形で大量虐殺があったわけでもない。ただ一人のパレスチナ人運転手が、タクシー業務をしていたら撃ち殺されただけだ。そして類似した事件はしばしば繰り返されてきたし、この先も(占領が続く限り)続くだろう。それが大事件として衆目を集めることはない。しかし、それが「日常化」してしまっているところにこそ、問題は存する。これは「日々継続する民族虐殺に」ほかならない。

 なお、ある東エルサレムのタクシー運転手について書かれた、Staff Note 「タクシードライバーSOS/占領政策いまだ継続中」 (早尾貴紀)も参照のこと。

トップページ
パレスチナ情報センター