パレスチナ情報センター

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2006.06.10

緊急速報! ガザ虐殺――空爆・暗殺で約20人死亡/追記4つ

Posted by:情報センター・スタッフ

 ガザでこの8日(木)と9日(金)に、イスラエル軍による空爆が相次ぎ、計20人が殺害され、負傷者は50人を越えている。とりわけ9日の海岸への空爆では、ピクニックに来ていた家族ら、子どもを多く含む民間人が多数殺傷されている。以下は、IMEMCやHaretzなど、いくつかの速報ニュースを要約したものだ。

 まずは8日に、イスラエル軍は、ガザ地区からイスラエル側にカッサーム・ロケット弾で砲撃をしていた武装グループの責任者の暗殺作戦として、空爆を実行。ガザ北部で、車で移動中のところを空軍が狙い撃った。乗っていた「人民抵抗委員会」のメンバーとみられる3人が殺害された他、街中の交差点付近での空爆であったため、周囲にいた市民10人以上が巻き込まれ負傷し、病院へ運び込まれた。

 8日深夜には、やはり人民抵抗委員会の幹部で、ハマス内閣でも治安担当をしているジャマル・アブ・サムハダーナもまた、ガザ地区南部の訓練キャンプで、イスラエル軍によって暗殺された。この爆撃で他に3人のメンバーが殺害された。
 この暗殺作戦に対しては、人民抵抗委員会とハマスがともに、「報復」を宣言している。

 9日夕方の海岸への空爆では、ピクニックに来ていたパレスチナ人の家族らが被害を受け、6ヶ月と1歳半の子どもとその母親、十代の少年など、10人前後が殺され、40人以上が負傷した。当初イスラエル軍は、関与を否定。しかしすぐに、民間人殺害となったこの空爆が、イスラエル海軍の艦船からの砲撃によるものであったことを認めた。
 軍の責任者は、まだ状況がつかめていないとした上で、この「誤爆」がなぜ行なわれたのかを調査中であると語った。

 これに先立って、先週(5月30日)には、地上からもガザ北部にイスラエル軍が侵攻・攻撃し、イスラーム聖戦のメンバー4人を殺害する軍事作戦も行なっていた。陸上侵攻は、「ガザ撤退」(と称されるもの)以降は少なくとも二度目とみられている。
 またパレスチナ人権センター(PCHR)によると、6月1日〜7日のあいだにも断続的にもイスラエル軍によるガザ攻撃が続けられており、合計5人の一般市民が殺害され、30人が負傷している。
 陸・海・空軍を総動員しての、ガザ攻撃がずっと継続されているのだ。「平穏な日」などないに等しい。どこがガザ「撤退」だったのか。「要人暗殺」と市民の巻き添え、「誤爆」と称される民間人空爆の繰り返し(本当に「誤爆」なのか?)。そしてパレスチナ側武装組織による報復宣言と、パレスチナ人たちのイスラエル側への不信。「和平」を遠ざけているのは、イスラエルでしかない。
 にもかかわらず、国際社会は、そして日本のメディアも、「和平崩壊」がハマス内閣によってもたらされたもの(つまりパレスチナ人たちの「選択」)であるかのように報じている。おそるべき、認識の転倒だ。この数日のイスラエルの軍事行動を、世界のメディアがどう報じるのかには、十分な注意が必要だ。

【附記】
 9日のガザ海岸空爆での死者数はまだ速報値で7人〜12人と開きがあり、また重傷者が様態悪化で死亡をする可能性もあるため、確定した人数ではない。

【追記1】
 海岸空爆での死者数は現段階では8人とみられる(10日)。
 またイスラエル軍は、艦船からの砲撃をいったん認めたが、現段階では、「海軍の砲撃の事実はないし、空軍も関与していない」と、この事件への責任そのものを否定している。だが他方で、この海岸空爆のわずか数分前と数分後にも、この近辺でさらなる空爆による暗殺作戦を連続して行なっており、武装組織のメンバーそれぞれ2人(ハマス)と3人(人民抵抗委員会)が殺害されている。この間、計5発のミサイルが空軍によって発射されているが、そのうちの1発の着弾地点をイスラエル軍自身が説明できていないという報道もある。

【追記2】
 暗殺作戦と民間人犠牲者に関して、情報センターのスタッフ・ノートに 「暗殺作戦の真の意図は?」 (早尾)がアップされた(11日)。

【追記3】
 11日にも暗殺作戦は継続され、ガザ北部のベイト・ハヌーンでハマスの活動家2名が殺害され、他に3人のメンバーが負傷。4人の一般市民が巻き添えで負傷し病院に運ばれた。IMEMCニュースによる。これだけの「誤射」と称する「虐殺」をしておきながら、そんなことはイスラエルにとってはまったくおかまいなしである、ということだ。

【追記4】
 イスラエル側は、ガザの爆発がなおパレスチナの武装勢力に埋められた地雷(イスラエル海軍の上陸を妨害するためとされる)の爆発の可能性が否定できないと、軍が無関係であることをほのめかしている。だが、同時刻にその近辺で複数のミサイル攻撃を行なっており、すべての着弾地点を把握できていないことも認めている。完全には否定し切れないところに、イスラエル軍の側の苦しい釈明を読み取ることもできよう。
 また、現在も継続されている暗殺作戦では、必ず毎回市民を巻き添えにし死傷者を出していることも強調されるべきである。(6/13)

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