2006.09.06
新刊紹介『反空爆の思想』
Posted by:情報センター・スタッフ
パレスチナ問題を直接論じたわけではないが、しかし、重要な本が出た。
吉田敏浩『反空爆の思想』(NHKブックス、2006年8月)だ。
イスラエル軍によるレバノン侵攻では、徹底した空爆によって、レバノン市民1000人にものぼる死者を出した。また、ヒズブッラー側からのロケット攻撃によって、約40人のイスラエル市民が死亡し、うち半数がアラブ系住民であった。
また、パレスチナの被占領地、とりわけガザ地区への空爆は熾烈を極め、ここのHot Topicsにも書いてきたように、この数ヶ月だけで200人以上がミサイル攻撃によって殺害されている。
なぜにここまで残虐なことができるのか。
この本は、第一次世界大戦以降に急速に発展してきた「空爆」という攻撃手段が、いかに深刻な「被害者の非人間視」によって可能となっているかを論じている。そして、「空爆は戦争終結を早める手段だ」とか、そのためには「空爆による死者はやむをえざる犠牲者だ」などといった言説が、いかに嘘っぱちであり、人殺しを正当化するレトリックであるかを論証している。
パレスチナ/イスラエルについて考えるにあたっても、重要な視点を与えてくれる。
ぜひ一読されたい。