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2009.01.09

(ガザ侵攻関連:翻訳)ロバート・フィスク:アラブの人たちはどうして私たちをこんなにも憎むのか?──私たちはその答えを知っているはずだ

Posted by:情報センター・スタッフ

イギリスの『インディペンデント』紙に掲載された、中東に関するベテラン記者ロバート・フィスクの記事の翻訳です。


アラブの人たちはどうして私たちをこんなにも憎むのか?
──私たちはその答えを知っているはずだ

ロバート・フィスク

2009年1月7日
インディペンデント

またもイスラエルは、パレスチナ人の前で地獄への扉を開け放った。国連の運営する学校に避難していた40人の一般市民が死んだ。さらに、別の場所に避難していた人が3人。「戦争の潔白性」を信じるイスラエル軍にとって、ひと晩の仕事としては「悪くない」というところだろう。しかし、私たちはどうしてこれに驚かなければならないのか。こんなことはもう嫌というほど見てきたではないか。

1982年のイスラエルのレバノン侵攻では1万7500人が死んだ。このほぼ全員が一般市民で、大半は子供と女性だった。サブラ-シャティーラの殺戮では1700人のパレスチナの一般市民が死んだ。1996年のカナの殺戮では、国連の駐屯基地に避難していた106人のレバノンの一般市民が死んだ。半分以上が子供だった。2006年のレバノン侵攻では、イスラエル軍に、家を出て避難しろと命令されたマルワヒン村の人々が避難所に向かおうとしているところにイスラエルのヘリコプターが襲いかかり、ほぼ全員を殺戮した。同じ2006年のレバノン空爆・侵攻では1000人が死んだ。このほとんどが一般市民だった。

私たちはこうしたいっさいを忘れてしまったと言うのか?

驚くべきは、数えきれないほどの欧米諸国のリーダーたち、大統領・首相たち、そして、数えきれないほどのメディアの編集者やジャーナリストが、大昔からの真っ赤な嘘、イスラエルは一般市民の犠牲者が出るのを避けるために多大な努力を払っているという嘘を受け入れていることだ。今回もまた、ガザの殺戮が始まるほんの数時間前に、イスラエルの大使は「イスラエルは一般人の犠牲者が出るのを避けるために、ありとあらゆる努力をする」と言い放った。そして、世界の大統領・首相連は、停戦を避ける口実としてこの嘘を繰り返し、それによって昨晩の惨殺行為にみずから手を貸した。ジョージ・ブッシュが48時間前に即時停戦を要求するだけの気概を持ち合わせていたなら、そうしたら、この年とった人たちと女性たちと子供たちは今も生きていただろう。

昨晩起こったことは「遺憾」などというものではない。恥辱の極みだ。戦争犯罪という表現はきつすぎる? もしこの残虐行為がハマースによってなされたものであったなら、私たちは即刻、戦争犯罪と呼んではばからないだろう。だから、これは戦争犯罪なのだ。これまで、中東のあちこちの軍隊、シリア軍、イラク軍、イラン軍、イスラエル軍によってなされてきた多くの大量殺害について伝えてきた私としては、シニシズムで応じるべきなのかもしれないとは思う。しかし、イスラエルは、自分たちは「国際的なテロ」に対する「私たちの」戦争として戦っているのだと主張している。ガザで戦っているのは、私たちのため、私たち欧米の理念のため、私たちの防衛のため、私たちの安全のため、私たちの基準に基づくものだと言っている。だとすれば、今ガザに向けられている蛮行には、私たち自身もまた加担していることになる。

これまでも、私は、こうした非道な行為を糊塗するためにイスラエル軍が使ってきた口実の数々を報告してきた。これからもイスラエル軍がいっそう熱心にこうした口実をまき散らすことは充分に考えられる。そのいくつかをここで改めて確認しておこう。パレスチナ人はみずから同胞である避難者を殺している/パレスチナ人は墓地の遺体を掘り起こし、それを攻撃された場所のあちこちに置いている/パレスチナ人は武装派を支持しているから、また、武装パレスチナ人は罪のない一般市民を意図的に「盾」に使っているから、とどのつまり咎められるべきはパレスチナ人だ。

サブラ-シャティーラの殺戮を実行したのはイスラエルの同盟集団である、レバノンの極右ファランジスト党の民兵だが、48時間の間、イスラエル軍は何もせずに殺戮が進行するに任せ、つまりは、みずからも虐殺に加担していたことが、のちの調査で明らかになった。イスラエルの罪責が問われた時、時のメナヘム・ベギン政権は、とんでもない誹謗中傷だと、逆に世界中を非難した。1996年、カナの国連駐屯基地に大砲を撃ち込んだ時には、イスラエルは、ヒズボッラーの武装メンバーがその基地に潜んでいたからだと主張した。これは嘘だ。ヒズボッラーが国境で2人のイスラエル兵を捕捉したことに始まった2006年の戦争での1000人以上の死は、単純にヒズボッラーの責任だとして片づけられた。イスラエルは、2度目のカナの殺戮で殺された子供たちの遺体は、墓地から持ってこられて現場に置かれたものだろうと主張した。これもまた嘘だ。マルワヒンの殺戮に関しては、イスラエルは弁明すらしていない。村の人たちは、逃げろというイスラエルの命令に従って避難所に向かおうとしていたところをイスラエル軍のヘリコプターの銃撃に襲われた。村人は、自分たちが純然たる一般人であることがイスラエルのパイロットにもはっきりわかるようにと、子供たちを、これから避難所に運んでくれることになっているトラックの周りに立たせていた。そこに、イスラエルのヘリコプターが至近距離から銃弾を浴びせ、村人と子供たちを次々になぎ倒していった。生き残ったのはわずかに2人。死んだふりをしてじっと動かずにいたおかげだった。マルワヒンの殺戮に対して、イスラエルは申しわけ程度の謝罪もしていない。

12年前にも、イスラエルのヘリコプターが近隣の村から一般人を運んでいる途中の救急車を攻撃し、子供3人と女性2人を殺害した。この時も村人たちは、イスラエルから「別の場所に移るように」と命令を受けていた。イスラエルは、ヒズボッラーの武装メンバーが救急車に乗っていたからだと主張した。これは事実ではない。私は、これら殺戮行為のすべてを調査し、生存者から話を聞いて、記事にした。ジャーナリスト仲間の多くが同じことをした。そんな私たちは、当然のように最大限の誹謗中傷を投げつけられた。私たちは反ユダヤ主義者であると口を極めて非難されたのだ。

以下に書くことに、私はいささかの疑問も抱いていない。私たちはこれからもまた繰り返し、でっち上げの誹謗がまき散らされるのを耳にするだろう。「悪いのはハマースだ」という嘘はもとより(まったくのところ、今回のことを付け加えなくとも、ハマースを咎める口実はいくらでもある)、「墓地から運んできた死体」という嘘が出てくる可能性もありそうだ。ほぼ間違いないのは「ハマースが国連の学校の中にいた」という嘘、そして、絶対的に確実なのは「反ユダヤ主義者」という嘘。さらに、我々のリーダーたちは、あわてふためきながら、世界に対し、最初に停戦協定を破ったのはハマースであることを思い出させようとするだろう。これもまた事実ではない。停戦協定を先に破ったのはイスラエルだ。11月4日にイスラエルはガザを攻撃して6人のパレスチナ人を殺し、11月17日にも再度の攻撃で、さらに4人のパレスチナ人を殺した。

そう、イスラエルにも安全を求める権利はある。この10年間で、ガザの周辺で12人のイスラエル人が死んでいる。これは、実際、恐ろしい数字だ。だが、わずか1週間あまりで600人ものパレスチナ人が死に、1948年(この時、デイル・ヤシン村でのイスラエルによる殺戮がきっかけとなって、パレスチナ人が自分たちの土地から逃げ出し、そして、そこがイスラエルとなるに至った)以来のパレスチナ人の死者が何千人にもなるというのは、まったく別のスケールの話だ。これが思い起こさせるのは、いつもながらの中東での流血の事態などではない。今回の空爆・侵攻は1990年代のバルカン戦争に匹敵する残虐行為だと言うべきだろう。そして、アラブの人々が抑えることのできない怒りに立ち上がり、その猛烈な怒りを欧米諸国に向けた時、私たちは当然のように、こう言うだろう。私たちにはまったく関係がない、と。どうしてアラブの人たちは私たちを憎むのか。そう問うかもしれない。しかし、私たちは、その答えを知らないと言うわけにはいかないのだ。


原文:Why do they hate the West so much, we will ask

by Robert Fisk Wednesday, 7 January 2009 The Independent

翻訳:山田和子


今回のガザ攻撃についてのロバート・フィスクによる別の記事の翻訳
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