パレスチナ情報センター

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2009.01.22

(ガザ侵攻関連:翻訳)持続するアクションを!──ガザの人たちを沈黙のうちに死なせないために

Posted by:情報センター・スタッフ

パレスチナ/イスラエルに関する多くの重要なレポート・論評を掲載してくれているサイト「エレクトロニック・インティファーダ」の共同創設者であるアリ・アブニマーが、昨年12月27日、イスラエル軍によるガザ空爆が開始されたその日に発表した記事です。

この3週間あまりの間、多くの人やサイトで引用・参照されてきたもので、「基本文書」の位置づけにあると言っていいものですが、「停戦」−−一般の人たちの目には「これで終わった」と映る状況になった今に、よりふさわしい内容とも言えます。


持続するアクションを!──ガザの人たちを沈黙のうちに死なせないために

アリ・アブニマー
エレクトロニック・インティファーダ
2008年12月27日

「ラッパを吹き、太鼓を打ち鳴らして、イスラエル空軍が今行なっていることを祝いたい」──これは、ガザに隣接するスデロットのイスラエル市民防衛隊幹部、オフェル・シュメーリングが、今日、アル・ジャジーラで言い放った言葉だ。背後では、イスラエル軍の最新の殺戮の映像が世界に向けて放送されていた。

そのほんの少し前、アメリカが供与したイスラエルのF-16戦闘機とアパッチ・ヘリコプターが、イスラエルが占領するガザ地区の10を超える場所に100発以上の爆弾を落とし、少なくとも195人を殺害、100人以上に怪我を負わせた。空爆された多くは警察署で、世界中の警察署がそうであるように、どれも市街地の真ん中にあった。アメリカ合衆国政府は即刻、このイスラエルの攻撃に対する支持を表明した。他国もそれに追随すると思われる。

ニュースは、死者の多くはパレスチナの警察官だと伝えている。イスラエルが「テロリスト」とレッテルを貼ったこれらの死者の中には、10人以上の交通警官が含まれている。数はまだ判明していないものの、一般市民の死者・負傷者もいる。アル・ジャジーラでは何人もの死んだ子供の映像が流れており、イスラエルの空爆が、パレスチナの何千人もの子供が学校から家に戻る時間帯、市街を歩いている時間帯になされたことがわかる。

シュメーリングの歓喜は、イスラエル人と世界中のイスラエル支持者たちの間に広がっていっている。いわく──イスラエルの暴力は正当な暴力である。これは「テロリスト」に対する「自衛」であり、したがって、当然正当なものである。イスラエルの爆撃は、イラクとアフガニスタンでのアメリカ軍・NATO軍の爆撃と同様、自由と平和と民主主義のための爆撃である、云々。

イスラエルの殺戮開始を正当化する論理もまた、早くも、英語圏のメディアによって、イスラエルの言葉どおりに伝えられつつある。いわく──12月19日に停戦協定が期間切れとなって以来、パレスチナのロケット弾攻撃は激しさを増す一方であり、イスラエルはその「報復」として行動している、云々。(12月27日現在、最近のロケット弾によってイスラエル側に死者・負傷者はひとりも出ていない)

しかし、パレスチナ側から見れば、今日のとんでもない攻撃も、パレスチナ人を殺すイスラエルの「やり方が変わった」というだけのことでしかない。この何カ月もの間、パレスチナ人、とりわけ高齢者や病人は、食糧や必要な医薬品が手に入らないため、世界の大多数の人には知られることもないままに、死に追いやられてきた。2年にも及ぶイスラエルによる封鎖は、ガザ地区という広大な監獄に閉じ込められた150万のパレスチナ人(その大多数は難民と子供だ)を苦しめ、その生を奪い取ることを意図して、計算ずくで行なわれてきたことなのだ。イスラエルは、不可欠な医薬品のガザへの搬入を禁じた。インスリンやガンの治療薬、透析用の機器などが入手できなくなってしまったために、ガザ地区の多くのパレスチナ人が沈黙のうちに死んでいった。

メディアが決して問わないことのひとつに、イスラエルの言う「停戦」がどういう意味なのかということがある。イスラエルの考えはしごくシンプルだ。イスラエル流の「停戦」下では、イスラエルがパレスチナ人を飢えさせている間、パレスチナ人を殺している間、パレスチナ人の土地を暴力的に植民地化していっている間、パレスチナ人は当然、おとなしくしているべきだというものである。イスラエルは、ガザのパレスチナの人々のフィジカルな生活を支える食糧や医薬品の搬入を禁じただけではない。そこにはまた、パレスチナ人の意識・精神を飢えさせるという意図もある。封鎖の結果、ガザには、子供たちの教科書を印刷・製本するインクや紙、接着剤すらなくなっている。

国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)ガザ事務所の所長、ジョン・ギングは、11月、エレクトロニック・インティファーダにこんなふうに語った。「停戦は5カ月めに入っているが、停戦はガザの人々に何の益ももたらしていない。とりわけこの2カ月ほどは最悪で、人間らしい生活はいっさい回復されてない。停戦に入ってから、私たち国連の支援物資の搬入も厳しく制限されるようになった。実のところ、UNRWAのポジションそのものがどうしようもなく不安定で危ういところまで追い込まれている。封鎖が数日続くだけで、備蓄食糧は底をついてしまう」

これがイスラエルの言う停戦だ。イスラエルの攻撃に対する反応はどんなものであろうと──西岸地区のビリーン村やニリーン村のアパルトヘイト・ウォールに対する抗議行動のように、武器などいっさい関係ない平和的なものであろうと、銃弾や爆弾で迎えられる。西岸地区からイスラエルに対するロケット弾攻撃はいっさいなされていない。それにもかかわらず、停戦が始まってからも1日として、イスラエルによる攻撃、殺害、土地の収奪、入植者たちの暴行、パレスチナ人の拉致・拘束がなかった日はないのだ。ラマッラーのパレスチナ自治政府はこれまで、イスラエルの要求をことごとく呑み、イスラエルに代わってパレスチナのレジスタンス勢力と戦うための「治安部隊」を組織すらした。治安部隊は、これまで、イスラエルの容赦ない植民地化の暴力の手から、ただのひとりのパレスチナ人も、その財産も、生活の糧も救ったことはない。つい最近の例を見ても、11月9日に、被占領東エルサレムで50年以上にわたって暮らしてきたアル・クルド一家の家が破壊された時、治安部隊はそれを止めようともせず、結果、一家の家があった土地は入植者に奪われることになってしまった。

今再び、私たちはガザの殺戮をまのあたりにしている。昨年、2007年の3月に、たった数日の間に10人以上の子供を含む110人のパレスチナ人がイスラエルに殺された時と同じように。今再び、この無法国家が、誰にもとがめられることなく、恐ろしい犯罪を犯していることに、パレスチナの人々は激しい怒りと絶望を感じている。

今日27日のアラブのメディアとインターネットでも、いたるところで怒りが噴出している。だが、その怒りはイスラエルだけに向けられているわけではない。アラブ諸国の指導者たちに対して、かつてなく激しい怒りが投げつけられている。そして、そこに必ず付されているのは、クリスマスの日のカイロでのイスラエルの外相、ツィピ・リヴニの映像だ。エジプト大統領、ホスニー・ムバーラクの隣に座り、笑みを浮かべているリヴニ。そして、笑いながら一緒に手をたたいているエジプトの外相とリヴニの映像。

イスラエルの大手新聞ハアレツは今日、「内閣は水曜(24日)、イスラエルがガザに対し、いつどういう軍事作戦を実行するかに関しては、首相と国防大臣と外務大臣が決定することを承認した」と報じた[*注]。みなが口々に言っている。リヴニはエジプトの大統領や外相に何と言ったのか? それ以上に重要なのは、エジプトの連中はリヴニに何と言ったのか? イスラエルはエジプトに、ガザの市街を今一度血で赤く染めるゴーサインをもらったのか? エジプトが1年以上にわたってラファのボーダー・クロッシングを閉鎖しつづけ、それによってイスラエルのガザ封鎖を助けつづけてきたのは誰の目にも明らかだ。それを知った上でエジプトに肩入れしようという者など(特別な理由がある者を除いて)あろうはずもない。

またしてもガザで繰り返されるこの大量殺戮に、大勢の人が激しい怒りと悲しみを味わっている。頂点にあるのは、その怒りを、事態の道筋を変え、苦難を終わらせ、公正な状況をもたらすことができる政治レベルの対応につなげていく方法がほとんどないようにしか思えないという絶望感だ。

だが、方法はある。たとえわずかであっても、皆無ではない。そして、今は、そうした方法にこそ集中すべき時だ。すでに、私のもとにも、世界中で抗議デモや連帯のアクションが予定されているという知らせが続々と届いている。これは、とても大きな意味を持っている。しかし、デモのうねりが治まり、怒りの波が静まった時に、いったい何が起こるだろう? 私たちはまたも、ガザのパレスチナ人たちが沈黙のうちに死んでいくのを放置しつづけることになってしまうのではないか。

パレスチナ人が求めているのは、本当の連帯の行動、持続的な断固たる政治アクションという形での連帯だ。ガザをベースとする「ひとつの民主国家」グループは今日、この点を改めて確認し、こう呼びかけた。「すべての市民社会の組織・グループと自由を尊重する人たちに求めます。即刻行動に移り、考えられる限りの方法で、それぞれの政府に、アパルトヘイト国家イスラエルとの外交的つながりを絶ち、イスラエルに制裁を加えるよう、圧力を加えてください」

こうしたアクションのための枠組を提供してくれるもののひとつに、グローバルな「パレスチナのための『イスラエルに対するボイコット、資本の引き揚げ、制裁措置(BDS)』運動」がある。私たちのうちに沸き立っている感情を、長いスパンでの活動につなげていかなくてはならない。今こそ、それが最も必要な時だ。目が覚めてみたら、またも「新たなガザの惨劇」が始まっていた──こんなことが二度と起こらないことを確実なものとするために。


アリ・アブニマー:エレクトロニック・インティファーダの共同創設者、エディター(のちにエレクトロニック・イラク、エレクトロニック・レバノンも創設)。プリンストン大学、シカゴ大学を卒業し、シカゴをベースに、『シカゴ・トリビューン』『ロサンゼルス・タイムズ』などに寄稿している。著書に One Country: A Bold Proposal to End the Israeli-Palestinian Impasse (Metropolitan Books, 2006)がある。


原文:Gaza massacres must spur us to action
Ali Abunimah, The Electronic Intifada, 27 December 2008

[*注]:今回のイスラエルによるガザ全面攻撃の準備段階から内閣の承認に至る経緯については、以下(ハアレツ紙12月28日付記事)に詳しく書かれています。

翻訳:山田和子


エレクトロニック・インティファーダ

パレスチナのための「イスラエルに対するボイコット、資本の引き揚げ、制裁措置(BDS)」運動

BDSの呼びかけ文(日本語)

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