2010.05.24
ミーダーン編『〈鏡〉としてパレスチナ――ナクバから同時代を問う』
Posted by:早尾貴紀
ミーダーン〈パレスチナ・対話のための広場〉 が一年間継続させていた連続セミナー「〈ナクバ60年〉を問う」が、一冊の本のかたちで編集・刊行されました。
ミーダーン〈パレスチナ・対話のための広場〉編
『〈鏡〉としてのパレスチナ――ナクバから同時代を問う』
現代企画室、2010年5月刊行、2400円(+税)
【目次】
はじめに・・・田浪亜央江
第一章 パレスチナの民族浄化と国際法
臼杵陽
阿部浩己
第二章 占領のノーマライゼーションと中東の分断
早尾貴紀
酒井啓子
第三章 アラファート時代の自治政府
奈良本英佑
太田昌国
第四章 アパルトヘイトの経験とイスラエル/パレスチナ
峯陽一
鵜飼哲
第五章 パレスチナ難民の法的地位と選択権
錦田愛子
板垣雄三
企画・編集から関わった者として、一、二点、セールス・ポイントを強調しておきたいと思います。
まず、各回、二人の講師の問題提起のあと、相互にコメントや対話を続け、さらに会場質疑を重ねています。討議・質疑の部分でも報告本体と同じぐらいに重要な論点が盛り込まれていました。ただ、読者の読みやすさの観点から、収録にあたっては、討議・質疑の部分も本文テキストのなかに盛り込んで原稿を再整理し、さらにそれを報告者/執筆者にリライトしていただきました。
ライブ感が損なわれたかもしれませんが、しかし単独の講演会では得られない広く深い問題視角の抉りだしには成功したものと思います。
それと、パレスチナ関係のセミナーとしては異例ですが、パレスチナの専門ではない方々に来て発言していただいています。国際法の阿部浩己氏、イラクの酒井啓子氏、ラテンアメリカの太田昌国氏、南アの峯陽一氏など。すでにパレスチナ問題について一定の知識をもっている方々にとっては、こうした専門外の人びとが、どのようにパレスチナ/イスラエルを見て語っているのかのほうが、興味深く読めるものと思います。
もちろん、臼杵陽氏、板垣雄三氏など、パレスチナ問題の大御所にもご参加いただいています。そうした意味では、幅広い読者の関心に応えることができる、貴重な一冊だと思います。
ぜひお買い求めください。