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2010.06.09

世界的な高まりを見せるイスラエル・ボイコットの動き

Posted by:情報センター・スタッフ

アパルトヘイト時代の南アフリカに対するBDS活動(ボイコット、資本の引き揚げ、制裁を求める活動)に深くかかわってきた人権活動家のアドリ・ニューホフさんが、イスラエルのガザ自由船団襲撃に対するヨーロッパ、アフリカ、中米などでのBDSアクションを伝える記事です。個人レベルでのイスラエル製品不買運動は当然のこととして、労働組合や自治体レベルでのボイコット、また、スポーツや学術・文化レベルでのボイコットなどが具体的に書かれており、BDSが実に多様な規模・内容のもとで展開されていることがよくわかります。南アフリカのアパルトヘイト体制を崩壊させたのも、その最大の動因はBDSにあったと言って過言ではありません(以下に書かれているように、今回の南アフリカの対応もすごいです)。

ひるがえって日本では、イスラエルBDSが世界的な広がりをみせるこのタイミングで、「無印良品」が日本の小売店としては歴史上初めてのイスラエル出店を決定し、反イスラエルBDS、アパルトヘイト支持を明確に打ち出しました。

それは単にアパルトヘイト下にある国で金儲けをしようとする企業倫理の問題ということだけでなく、「無印良品」のようなメジャーなブランドがいま新たにイスラエルへ進出することで、結果的にイスラエルの政財界に送ってしまう「アパルトヘイト支持」のメッセージや、結果的に日本の他の企業に送ってしまう「金儲けのためならアパルトヘイト支持でもなんでもやるべきだ。BDSなんか気にせずイスラエルに進出すればいい」というメッセージの点からも大きな問題だと思います。

(無印良品にあなたの声を届けてください:Stop無印良品キャンペーン

私たちひとりひとりが今日からでも実行できるアクションもいろいろあります(参考:イスラエル支援企業リスト)。


世界的な高まりを見せるイスラエル・ボイコットの動き

アドリ・ニューホフ
エレクトロニック・インティファーダ 2010年6月4日

9人の死者と多数の負傷者を出した5月31日のイスラエル軍によるガザ自由船団襲撃を受けて、世界中でイスラエルに対するボイコット運動、BDSが大きな高まりを見せている。BDS(Boycott, Divestment and Sanctions)は、イスラエルが国際法と人権を遵守するようになるまで、イスラエルをボイコットし、イスラエルに関連する企業や事業に投資した資本を引き上げ、イスラエルに対する制裁措置を求めていく活動で、大手労働組合の支援・主導のもとに様々なBDSアクションが進められている国もある。

イスラエルの封鎖によって、ガザの人々は4年もの間、食料をはじめとする基本的な物資の欠乏に苦しめられ、ガザの外に出る自由さえ奪われて、極度に人口密度の高い "檻" に閉じ込められつづけてきた。ガザ自由船団は、ガザ地区に住むパレスチナの人々との連帯を表明し、人道支援物資を送り届けるという平和的ミッションを敢行することで、封鎖に真っ向から立ち向かった。

この平和船団に対するイスラエルの攻撃に対して、世界中の10を超える大都市で、市民活動グループによる大々的な抗議デモが行なわれた。アラブの国々では285の市民活動グループが、人道支援船団に対してなされた犯罪行為を非難する共同声明を発表し、封鎖の終結と、イスラエルの戦争犯罪人たちを国際的な司法の場に引き渡すことを要求した。そして、パレスチナでは、BNC=パレスチナBDS全国委員会(the Palestinian Boycott, Divestment, and Sanctions National Committe:BNC)が、イスラエルによるガザおよび東エルサレムを含む西岸地区占領43周年を期して、2010年6月5日を緊急世界BDSアクションデーとすると宣言した。

BNCは、世界中の人々に、それぞれの政府に対し、イスラエルへの経済制裁と武器輸出禁止の実施を求める働きかけを強めてほしいと呼びかけ、労働組合に対しては、イスラエル製品を扱うのを拒否してほしいと求めた。これに呼応して、スウェーデン港湾労働者組合は6月15日の真夜中から24日までイスラエルのすべての船舶と荷の出入りを阻止することを決定──同組合のビョルン・ボルグ委員長はメディアに対し、何隻程度の船舶に影響があるかは不明だが、イスラエルからの荷の大半は果物で、スウェーデンからイスラエルへの出荷品は工業製品が多いと述べている。

南アフリカ物流労働者連合組合(the South African Transport and Allied Worker Union:SATAWU)も即座に対応し、「イスラエル製品のボイコットを強め、組合員にイスラエルの物品を扱うのをやめるよう呼びかける」と発表した。そして、SATAWUのメンバーである港湾労働者組合にも、スウェーデンにならって「南アフリカのすべての港へのイスラエルの船舶の入港ないし荷下ろしを認めないよう」呼びかけた。

南アフリカではまた、南アフリカ自治体職員組合(the South African Municipal Workers Union:SAMWU)が、6月4日の中央執行委員会で、南アフリカのすべての自治体を「アパルトヘイト国家イスラエルの存在しないゾーン」にするよう「直ちに行動していく」ことを全会一致で決議した。具体的には「商業、学術、文化、スポーツ、その他いかなる形でも、イスラエルとのつながりがいっさいない」ようにするというものである( "SAMWU Declares, Every Municipality an Apartheid Israel Free Zone!" 、4 June 2010)。また、イギリス最大の労働組合UNITEはマンチェスターでの会議で、「イスラエル企業からの資本引き上げ政策を強固に推進し」、「アパルトヘイト時代の南アフリカ製品をボイコットしたのと同じように」イスラエル製品・サービスのボイコットを推進していくという決議を全会一致で採択した( "Unite votes to boycott Israel," The Jewish Chronicle, 4 June 2010)。

被占領パレスチナ国連特別報告者のリチャード・フォークも「イスラエルの殺人行為」に対するBDSを支持すると表明した。

ノルウェー最大の労働組合連合組織、ノルウェー労働総同盟(LO)のロア・フローテン委員長は、イスラエルのガザ自由船団襲撃・虐殺に対して、世界第3位の規模のノルウェー政府年金基金に、すべてのイスラエル企業への投資を引き上げるよう呼びかけ、イスラエル駐在のノルウェー大使を呼び戻すよう要請した。ノルウェー政府年金基金はこれ以前に、複数のイスラエルの武器企業からの投資の引き上げを発表している。

ガザ自由船団襲撃直後に行なわれたノルウェーの世論調査では、BDS支持の割合が著しく上昇し、イスラエル製品をボイコットするつもりだと答えた人の数は9.5%から43%に増大した。社会主義左翼党の党首で教育大臣のクリスティン・ハルヴォルセンは、国際社会もノルウェーの現行政策にならってイスラエルとの武器取引をボイコットするよう呼びかけた。

スポーツボイコットの動きも強まっている。ガザ自由船団襲撃が起こった時、イスラエルにいたトルコのユース・サッカーチームは予定されていた試合をキャンセルして帰国したが、それにならって、スウェーデンのユースチームもイスラエルとは試合を行なわないことを決めた。

スウェーデンサッカー協会(SFA)は、ヨーロッパのサッカー統括機関UEFAに、スウェーデンのアンダー21のチームのイスラエルとの試合を中止にしてほしい──自分たちは道義的にそうするのが当然だと考える──と公式に申し入れた。しかし、UEFAは、国連の制裁決議が出ていないことを理由に、この申し入れを受諾しなかった。SFA会長ラーシュ=オーケ・ラグレルは、スウェーデンのラジオで、2010年9月に予定されているイェーテボリのオールド・ウレヴィ・スタジアムでのリターンマッチで起こるであろうファンの反応やイスラエルの選手に対するデモなどは心配していないと述べたものの、過去の例──2009年3月にマルメで行なわれたテニスのデヴィスカップの対イスラエル戦では、数千人のスウェーデンの一般市民による抗議デモが行なわれた──を考えると、抗議活動は相当な規模になることが予測される。

こうした市民社会の反応に伴って、政府レベルでもいつになく強いリアクションが起こっている。これは、市民の力が政策を変える力となりはじめている証左だと言っていいかもしれない。デンマーク、フランス、ギリシア、ノルウェー、スペイン、スウェーデン、エジプト、南アフリカ、その他多くの国々では、イスラエルの大使を呼び出してガザ自由船団襲撃に対する非難を表明した。アイルランド議会の外交問題委員会ではイスラエル大使の聴聞を予定していたが、イスラエル大使は「予測できない状況」を理由に聴聞の延期を求めた。委員会では、31日のイスラエルの行為に対してだけでなく、その後、支援物資および、ノーベル平和賞受賞者のアイルランド人、マイレッド・マグワイア女史を含む著名な平和活動家を載せてガザに航行中のアイルランド船籍のレイチェル・コリー号に対してイスラエルはどのような行動をとるつもりなのかが問われることになっていた。[*補足:レイチェル・コリー号は6月5日にガザ沖でイスラエル軍に拿捕され、イスラエルのアシュドット港に連行された]

ギリシアはイスラエルとの合同軍事演習の凍結、イスラエル空軍司令官のギリシア訪問の延期を決定。トルコは自国の大使をテル・アヴィヴから引き上げさせ、ビュレント・アルンチ副首相が、予定されていた3つの合同軍事訓練の中止を発表した。さらに、6月3日にはエネルギー大臣が、エネルギー・水関連のイスラエルとの共同プロジェクトをすべて凍結すると発表した。

ニカラグアは、イスラエルとの外交関係を凍結すると宣言するとともに、パレスチナの人たちへの支持を改めて表明、ガザ地区の封鎖の終結を求めた。南アフリカのジェイコブ・ズマ大統領はラジオ・インタビューで、いかなる国であれ、今回のように人道支援船団を襲撃したりすれば、市民世界の一員たる国家とは絶対に認めてもらえなくなるはずだと述べた。南アフリカは6月3日の時点で駐イスラエル大使を呼び戻し、イスラエルの襲撃に対する最大級の非難を表明した。

こうした外交や経済にかかわるアクションとともに、イスラエルとの学術・文化交流のボイコットの必要性を強調するスコットランドの作家、イアン・バンクスの提言を支持する声も高まっている。SF作家としても知られるバンクスは、ガーディアン紙への投稿で、世界中のアーティスト、作家、研究者たちにとって、「イスラエルにみずからのモラルの崩壊と倫理的な孤立状況を得心させる」最もよい方法は「シンプルに、この無法国家と今後いっさい関係を絶つことだ」と述べている。[*訳注]

[*訳注]イアン・バンクスは、上記の引用の前に、「ささやかながら意味のあることとして、私は、イスラエルの出版社に今後、私の本をいっさい翻訳・出版させないようエージェントに依頼した。すべての作家、アーティスト、クリエイティヴな活動にたずさわっているすべての人、そして、イスラエルと共同でプロジェクトを進めているすべての教育・研究機関の人たちにも、自分たちに何ができるかを考えてみてもらいたい」と述べている。


アドリ・ニューホフ:スイスを拠点に活動する反アパルトヘイト活動家・人権問題活動家・コンサルタント。1980年代には、オランダの "南アフリカ委員会(Komitee Zuiderlijk Afrika:KZA)" のためのさまざまなBDSプロジェクトに参画した。

原文:Global boycotts of Israel intensify after bloody Flotilla attack
Adri Nieuwhof, The Electronic Intifada, 4 June 2010


参考サイト:BDS・パレスチナからの呼びかけ

無印良品にあなたの声を届けてください:Stop無印良品キャンペーン
(2010年12月1日無印良品イスラエル出店計画の中止が発表されました)

翻訳:山田和子

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