パレスチナ情報センター

スタッフ・ノート

2004.02.01

Small Dreams の紹介

Posted by :早尾貴紀

一冊の小さな本の紹介です。

緻密な分析でもないし、熱い主張でもない、小さな寓話集なのですが、パレスチナで人びとが生きている現実を伝えようとしています。

Nassar Ibrahim, Dr.Majed Nassar
Small Dreams: 14 Short Stories from Palestine
ISBN:9950-320-01-1(出版社名がありません)

刊行は今年ですが、それぞれのお話は、1989年から2002年までのあいだに書かれたものです。著者は二人とも何らかの形でAlternative Information Center の活動にかかわっています。(AICについては、ワルシャウスキー著『イスラエル=パレスチナ 民族共生国家への挑戦』柘植書房新社をご参照ください。)

収録されている14の寓話のタイトルをすべて用いた短いエピローグが最後についていますので、それでもって紹介文に替えさせていただきます。(「 」内が各タイトル)

エピローグ

「ひとつの物語」を書くことはほんとうに難しい。とりわけその主人公が「牛たち」のように、自分たちが望みもしない「アイデンティティ・カード」を発行されているような場合には。ちょうどパレスチナ人たちと同様に。「ラブ・ストーリー」の喜びは、追放と屈辱の中で生きることを強いられた「帰還民」の苦難と釣り合う。「移動を禁じられて」いる人びとの苦境は、大きな監獄にいるようなものでも、少しはましなのかもしれない。他方で小さな監獄にいる人びとにとっては、小さな「ラジオ」を手に入れることさえも特別な贅沢なのだから。監獄に入れられていない人びとも、「犬のように殺される」かもしれず、もう「誰がために鐘は鳴るのか」を尋ねる機会は決して来ないのだ。「蝶々の友だち」になることさえもが、文字通りの命がけ。「百グラムのコーヒー」を買いに出かけることで命を脅かされる。パレスチナの現実と日常生活は過酷で、「パレスチナのイースター」を祝うことさえも簡単じゃない。われわれは目的地から「わずか十メートル」のところにいるのだが、その目的地に着くことさえも、いまだに「夢」で見るしかないのだ。