パレスチナ情報センター

スタッフ・ノート

2005.03.03

懲罰的な家屋破壊が中止されるという決定について

Posted by :Fibonacci

2月17日、イスラエルのモファズ国防相は国際的な非難を受けてきたパレスチナ抵抗グループメンバーなどの家屋破壊行為の中止を決定したと発表しました。「パレスチナ当局者は、イスラエルとの停戦合意の一環であると語った」(時事通信18日付)という報道もされています。

これに対しての、イスラエル内での運動側からの一つの「反応」を紹介します。

パレスチナ人の家をイスラエル軍・政府が破壊し続けていることに反対し活動してきた「家屋破壊に反対するイスラエル人委員会」(ICAHD)が出した声明で、今回の決定を「歓迎すべき一歩」だとしながらも、問題はこれに尽きないことを明らかにしています。

(以下、「New Profile」のメーリングリストに2月20日付でDorothy Naorさんが投稿した英文をテキストとして、和訳したもの)

「家屋破壊に反対するイスラエル人委員会」(ICAHD)の声明

2005年2月18日付

[翻訳:岡田剛士]

懲罰的な家屋破壊を中止するというイスラエル国防軍の決定は、小さな一歩だが、歓迎すべき一歩だ

「家屋破壊に反対するイスラエル人委員会」(The Israeli Committee Against House Demolitions : ICAHD)は、暴力的な行動に対する懲罰あるいは抑止のための措置としてパレスチナ人たちの家屋を破壊するという方針を中止するとの、イスラエル軍の決定を歓迎する。

この〔家屋破壊という〕方針は、〔暴力行為の〕実行者が裁判を受ける前に懲罰が与えられるがゆえに正当な法の手続きを飛び越してしまうことになるし、実行者の家族たち──犯罪に全く関わっていない人々──への集団懲罰にもなるがゆえに、明らかな国際法違反である。

IDF〔イスラエル国防軍〕の委員会が懲罰的家屋破壊の中止を勧告したのは、家屋破壊がパレスチナ人たちの間に抑止ではなく更なるレジスタンスを生み出すという、同委員会の評価が唯一の理由である。これは、全く無意味な承認しか受けてこなかった人権と国際法に対しては、満足を与えることになるのかもしれない。しかし家屋破壊という方針が、さらに後退してゆくことが求められているのだ。

重要なことは、懲罰的な家屋破壊というのが、家屋破壊のごく一部分でしかないということだ。IDFは、この〔懲罰的な家屋破壊という〕方針の下で270軒のパレスチナ人の家屋を破壊したと述べているが、「B'Tselem」〔イスラエルの人権グループ〕は672軒という数字を報告している。そして、この種の〔懲罰的な意味合いで行われた〕家屋破壊は、現在のインティファーダの4年間に破壊されたパレスチナ人たちの家屋4000から5000軒の僅か5〜15パーセントであり、1967年以降に占領地で破壊された12000軒の3〜5パーセントでしかない。

「B'Tselem」によれば、破壊されたパレスチナ人たちの家屋の60パーセントはイスラエル軍の作戦行動として行われたという。ならば、この種の家屋破壊もまた、軍の作戦行動それ自体と共に、中止されるべきだ。

さらに破壊された家屋の25パーセント──暴力行為やレジスタンスに全く無関係なパレスチナ人市民の家屋1000軒以上──は、その一家が建築許可を得ることができなかった〔つまり、無許可建築であった〕ために、裁判所の命令で破壊された。この種の家屋破壊は、パレスチナ人たちを西岸地区と東エルサレムの小さな居留地に閉じ込めることを意図したものであり、なおも大量に行われ続けている。

つまり、ある特定の種類の家屋破壊を中止するという今回の決定は、その有効性についての純粋に軍事戦術的な評価からなされたものだ。パレスチナ人たちに対しての和解の意思表示を示すものではないし、さらには国際法を確たるものとして承認することでもない。今回の決定を歓迎するが、しかし、より広範な和平プロセスとの関連を欠いていることは残念なことだと言わざるを得ない。

原文は以下に: http://electronicIntifada.net/v2/article3625.shtml