パレスチナ情報センター

スタッフ・ノート

2006.01.10

「ガリラヤのユダヤ化」の一つの山場

Posted by :早尾貴紀

先日、小さな記事がハアレツに掲載されました。ごく短いので、最後に粗訳を掲載しておきます。

ここで問題となっているアッカ(英語でAcre)は、1947年の分割決議ではアラブ側に入っていた、北部ガリラヤ地方にあるアラブ・パレスチナ人の港街です。しかし48年に建国を宣言したイスラエルは、第一次中東戦争の結果、分割線を大幅に変更し、アッカも含めたガリラヤ地方全体を領土の内に収めます。そしてそれ以降、現在に至るまで半世紀以上もかけて、「ガリラヤのユダヤ化」と呼ばれる計画を進行させています。それは、ほとんどすべての住民がアラブ・パレスチナ人であった(そしていまでもマジョリティはパレスチナ人である)ガリラヤ地方をたんに政治的に支配するだけでなく、そこにユダヤ人の入植を進め、逆にパレスチナ人の産業や街の発展を妨げるさまざまな政策によって、人口比を逆転させ、名実ともに「ユダヤ人の土地」とする計画です。

ガリラヤ地方は、現在のイスラエル領の中では、もっともパレスチナ人の人口の多い地域ですから、そこの「ユダヤ化」に成功するということは、つまりイスラエル全土(とりあえず現在事実上のイスラエル領となっている地域)を「ユダヤ化」することを成し遂げた、ということになるわけです。下記の記事が意味するのは、そのガリラヤ地方で最大級の都市であるアッカで、ユダヤ人人口が多数派をとる、そういう具体的な日程が見えてきている、それを実現する動きが具体的にある、ということです。

記事の中で、「ユダヤ人が永続的にマジョリティであるかぎりにおいてのみ、アッカはアラブとの混成都市としてありうる」ということが、しゃあしゃあとある議員によって言われています。しかしこれは、言うまでもなく、イスラエルというシオニズム国家のあり方とまったく同じものです。あくまでアラブ・パレスチナ人は、「できるだけいてほしくない邪魔な存在」として、かろうじて二級市民の地位を与えられているにすぎないのですから。

下記の新聞記事は、そういう露骨なレイシズムが、イスラエルにおいては、恥じることなく堂々とまかり通っているということを示しています。

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ハアレツ紙2006年1月8日

北部のユダヤ・アラブ都市のアッカで、アッカにおけるユダヤ人が永続的なマジョリティの地位に到達する方策についての会議が、この日曜日に開催される。こうした目的の会議の原型は、もともとは、アッカ議会の市長派に属する議員ムリ・コーエンの主催する「アッカにおけるユダヤ人コミュニティを強化する新フォーラム」によって創設された。

この週末にコーエンが地元紙に対し、以下のように語った。「ユダヤ人が永続的にマジョリティであるかぎりにおいてのみ、アッカはアラブとの混成都市として存続する権利がある。真の解決のためには、超正統派ユダヤ教徒でナショナリストのユダヤ人家族らを迎え入れられるような街にすべく適切な機関を設置することである。」

これに対してアッカ市当局は、次のように答えている。「市長は、アッカを発展させる活動、そしてそれを押し進めるための力強い人びとを呼び寄せる活動であれば、いかなるものであれ支持する」と。