パレスチナ情報センター

スタッフ・ノート

2007.04.21

イスラエル経済の活況とボイコットの必要性

Posted by :早尾貴紀

 イスラエルの産業・経済は絶好調らしい。
 「2006年の実質経済成長率は、5.1%、ハイテク製品生産額は前度比23%増。失業率は10年ぶりの低水準。半導体最大手の米インテルは2009年に従来の二倍規模の工場を完成し、米マイクロソフトは新たな研究開発センターを設けて地元ベンチャーに買収攻勢をかける。」(日経新聞、4月13日)

 イスラエルは、輸出額の半分をハイテク産業が占めているが、レバノン戦争の影響はまったくなかったらしい。とりわけ外国からの投資は旺盛で、「2006年の外国企業の直接投資はハイテク業界を中心に134億ドル(約1兆5千億円)と、前年比2倍以上に増えた。」(同)
 こうした経済的な好況は、パレスチナ和平にも大きな影響を与える。「経済界がパレスチナ問題で深刻な打撃を受けていないことは、パレスチナ自治政府との交渉を拒否し続けるイスラエル政府の姿勢に結びつく。ガザ撤退を唱え、政策決定に影響力を持つハイファ大学のダン・シフタン教授のように、『パレスチナ側との和平交渉は無意味』という極論さえ出る。そこには交渉が停滞しても経済にマイナス影響はないとの判断がある。」(同)

 つまりは、こうした経済的活況が続くかぎり、イスラエル政府が、対パレスチナの占領政策を改めることもなければ、イスラエル国民が和平を望む切迫した状況に置かれることもない。そして、こうしたイスラエルの経済基盤を支えているのが、ハイテク産業であり、それを支えているのが先進諸国からの海外投資である以上は、占領を維持させ、和平を阻害しているのは、アメリカや日本やEU諸国である、ということになる。
 だからこそ、"BDS"、つまり、Boycott(ボイコット)、 Divestment(投資中止)、 Sanctions(制裁)の必要がある。イスラエルの06年経済統計から見える経済の絶好調ぶりは、それゆえに、ボイコット・キャンペーンの重要性をかえって浮かび上がらせることになったように思われる。海外投資こそが、イスラエルの占領政策を可能にしている。
 付け加えれば、日本政府による 「平和と繁栄の回廊」構想 も、和平を進めるのではなく、イスラエルに対して「和平など進めなくても、国際社会はイスラエルに制裁などしませんよ」というメッセージになってしまっている。政策意図においてはいかに善意であろうとも、経済原則からすれば確実にイスラエルの占領へのゴーサインなのだ。