パレスチナ情報センター

スタッフ・ノート

2007.11.04

反壁キャンペーンのファトヒさんに会いました

Posted by :早尾貴紀

 今度来日し、全国を廻って講演するファトヒ・クデイラートさんと、反アパルトヘイト・ウォール・キャンペーンの事務所で会ってきました。招聘にかかる書類を渡すためだったのですが、ついでに日本訪問を前に、打ち合わせを少々。
(来日講演スケジュールは こちら「ファトヒさんスピーキング・ツアー」

 ところで、このオフィスは西岸地区内ラマッラーの郊外にあり、もちろんファトヒさんも西岸の人。しかし、日本に来るためのビザは、テルアヴィヴにある日本の領事部で申請しなければなりません。だから、西岸地区の人を招聘するには、イスラエル国籍の人か東エルサレムIDの人か(イスラエルが「併合」を一方的に宣言しているため、その住人のIDはイスラエル内を移動できる/でも国籍ではない!)、あるいは外国人が代理申請をしなければならないんですよね、、、
 今回はここの事務所で働いて3年になる外国人スタッフが代理申請に行ってくれるとのこと。

 さて、ファトヒさんは、ご自身がヨルダン渓谷の出身で、このNGOでもヨルダン渓谷の問題を担当されています。ヨルダン渓谷地帯というのは、西岸地区のなかでも、ユダヤ人の入植地・プランテーションが多い地域であり、ほとんどがパレスチナの自治権が一切およばない「C地区」(A地区が行政権と警察権、B地区が行政権のみ、C地区はどちらもない)であり、またヨルダンと接する国境であるために、イスラエルが完全に支配をしている地域です。また、地元のパレスチナ人に対しては、建築の禁止、井戸採掘の禁止、移動制限、家屋破壊など、徹底した人権侵害が行なわれている地域でもあります。(関連記事は アドリ・ニューホフ「ヨルダン渓谷を略奪するイスラエル」
 そのユダヤ人の入植地にある農場やその加工場では、周囲のパレスチナ人が安価な労働者として雇用されています。もちろんそこで働く当人たちにしてみれば、貴重な雇用の機会であり、かけがえのない現金収入源であることでしょう。しかし、だからといって、イスラエルの占領が地元の人びとに恩恵をもたらしているとか、入植地の利益が地元に還元されているだなんてことにはならないでしょう。
 現実として地元の人びとの経済基盤が入植地経済に依存させられているということが、占領批判を封じることになっていいはずがありません。

 いま日本政府・JICAは、この地域に狙いを定めて 「平和と繁栄の回廊」構想 なるものをぶち上げて、イスラエル政府・イスラエル企業とともに開発事業に乗り出そうとしています。政治的和平はまず経済協力から、という掛け声のもと、アメリカ張りの「仲介者」ヅラをして、「対立する両者」を共同開発プロジェクトに参加させることで、「信頼醸成」を目指すと同時に、「貧困に喘ぐ」パレスチナに「雇用」をもたらすと謳っています。
 僕自身は、こうした日本政府・JICAの姿勢は、根本的に間違っていると思っていますが、それはいまはさておき。
 ファトヒさんももちろん、この問題には強い関心を払っています。ひじょうに批判的であることは当然として、現地を知る立場から、こうした介入・開発が重大な帰結を招くことを恐れています。
 今回、地元で占領の問題に取り組んでいるパレスチナ人から生の声を聞くことによって、彼らがいまどういう状況に置かれているのか、そして事態を打開するために何を求めているのか、日本の市民とはどのような関係が構築できるのか、それを知り、そして考えを深める貴重な機会になると思います。

 もう一点、最近の風潮として、イスラエルによるパレスチナ占領の問題に対する国際的な関心の低下が感じられます。「第二次インティファーダ」と言われた状況が2005年ぐらいから「落ち着き」を見せ、また昨年のレバノン侵攻戦争も終結して以降、あからさまな大規模かつ長期的な「侵攻」や「戦闘」が報道上は見られなくなったということが挙げられます。しかし、ハマスの政治家・活動家らを標的にした弾圧や、局地的な侵攻・暗殺・拘束が絶えることはなく、また西岸各地の検問所も一向に撤去される気配はありません。
 占領状況はなにひとつ改善などされていないのです。しかし、報道の量はガクッと減りました。一般には、報道がされなければ問題は起きていないというふうに捉えられがちです。
 今回も西岸のいくつかの町や村を歩いて、あらためて人びとの閉塞感を確認しました。ファトヒさんの報告は、ヨルダン渓谷の状況だけにとどまらず、分離壁や検問所に代表される占領の問題全般におよぶものとなると思います。「終りなき占領」の現状を知るという意味でも、ひじょうに重要な機会になると思います。

 ぜひご参加ください。
パレスチナから日本全国巡回! 反分離壁、反占領キャンペーン!