パレスチナ情報センター

スタッフ・ノート

2008.07.17

東エルサレムの住民に対する集団懲罰/家屋破壊について(その2)

Posted by :早尾貴紀

 東エルサレムを一方的に「併合」しておきながら、その住民について、「パレスチナ人はみなテロリストだ、家屋破壊をせよ!」、というイスラエル首相、国防大臣から、ユダヤ人入植者、新聞コラムニストにいたるまでの、「テロだ、テロだ」の大合唱がある一方で、わずかながら冷静な論調も出てきてはいます。

 まずは、すでに退官した元地裁判事・軍法務官であるアムノン・ストラシュノフ。彼は、「仮に高裁が家屋破壊が合法であると判断したとしても、その効果においては疑問であり、また良心に照らして、すべきではない」と言います。
 1987-89年の第一次インティファーダの最初の3年間で、イスラエル軍は法的手続きをとりながら、西岸・ガザ地区で330戸の家を破壊し、220戸の家を封鎖したとされます。しかし第二次インティファーダを防ぐことはできませんでした。そして第二次インティファーダでは、もはや何百戸の家屋破壊をしたのか、正確に把握するのは困難なほどです。
 しかし、ストラシュノフによると、第二次インティファーダの最中の2005年に、いったんイスラエル軍は軍内部の委員会の勧告に従い、家屋破壊の方針を休止させました。そしてその後、家屋破壊が「テロ行為」を抑止しているかどうかを調査し、結局、家屋破壊を積極的に遂行していた時期に、「テロ活動」を減らすことができていなかったことが明白になった、というのです。彼は、「抑止理論は破綻した」と断言します。
 そしてストラシュノフによれば、それにもかかわらず家屋破壊が叫ばれるのは、この時期に政治家らが今年の選挙を睨んでのアピールをしたいからではないか、という疑念があると言います。
(以上、ハアレツ紙7/6より。)

 次に、ナショナル・セキュリティ研究所のイェフダ・ベン・メイル。彼は、今回の家屋破壊などについて、イスラエル社会が冷静さと平衡感覚を失っていると指摘します。
 メイルはこう述べます。「今回の犯人は、麻薬中毒者であり、単独犯だ。家族から犯行の支援を受けていたわけでもないのに、家屋破壊をするのは不当である」と。そして、家屋破壊は、東エルサレム住民のなかに不必要な憎悪を残すばかりで、賢明な判断ではないし、「われわれのユダヤ教道徳にも反する」、と。
(以上、ハアレツ紙7/7より。)

 たしかに、こうして冷静な批判的意見を見ると、少しはホッとするところはあります。
 しかし同時に次のことも指摘しなければならないと思います。
 彼らは、家屋破壊によって、イスラエルのイメージが損なわれることを懸念しており、その点で「効果的ではない/マイナス点がある」と考えていること。そして、「統合エルサレム」の正当性を世界から疑われるような事態は避けねばならないと考えていること、です。
 こういう冷静な意見を述べる彼らには、東エルサレムの併合が不当なことだという認識やその住民が無権利状態に置かれているという認識は微塵もない、ということもまた事実なのです。