パレスチナ情報センター

スタッフ・ノート

2008.11.04

東エルサレムの「不法建築家屋」への水道敷設許可から見えてくること

Posted by :早尾貴紀

 11月4日付ハアレツ報道によると、エルサレム市当局が、東エルサレムにあるパレスチナ人の「不法建築家屋」に対して、水道を供給する方針を固めたらしい。
 これは「人道的措置」として喜ぶべきことか? さすがイスラエルは「中東唯一の民主国家」だと感心すべきか?

 もちろん水道がないよりはあったほうがいい。言うまでもない。
 しかしこの報道からは山のように「占領」の問題、イスラエルの人権侵害こそが指摘できる。

 まず前提として:イスラエルによる1967年のヨルダン川西岸地区全体の占領と、その後の東エルサレムの一方的な「併合宣言」によって、東エルサレムは「イスラエル領」として支配下におかれている。しかしパレスチナ人住民には、イスラエルの国籍・市民権は与えられておらず、特別な「エルサレムID」が付与されている(その他の西岸地区から切り離されている)。東エルサレムを「ユダヤ化」してイスラエル領としての既成事実をつくりたいイスラエルは、一方でユダヤ人入植地を大規模に建設しつづけ、いまでは20万人ものユダヤ人を東エルサレムに入植させているが、他方でパレスチナ人に対しては、家屋の建設許可を出さない。それでも生活のために仕方なくパレスチナ人が家屋を新築・増築した場合には、イスラエルは「不法建築」だとして家屋破壊をおこなうことがしばしばある。またエルサレムIDの更新を毎年おこない、書類不備を見つければ即刻IDを取り上げ、居住権を奪うことも多い。

 さて、今回の記事によると、25万人の東エルサレムのパレスチナ人住民のうち、なんと16万人もが「不法建築」された家屋に暮らし、公式な水道供給を受けてこなかったという!! なんと住民の3分の2にも達する。
 もちろん家庭のなかで水道なしに暮らしているわけではなく、実態としては、この16万人のうちの大半が、近隣の井戸か水道管から勝手にパイプを引いて水道を利用している。
 まずは、こうした基本的人権を無視した状況が、1967年以来40年間も続いてきたということこそ再認識されなければならない。政府・市当局が、住民に対して水道サービスを提供しないなんていうことが許されるはずがない。

 そして今回の方針変更によって、こうした「不法建築物」に住んでいる16万人に対して、エルサレム市当局は水道を公式に供給することにしたという。これによって、「16万人分の水道料金を徴収することができる」、と市当局の担当者が発言している!(そのまま新聞に発言が掲載されている)。
 「貧困ビジネス」という言葉が世界的に広まりつつあるが、さらに「民族差別ビジネス」も加わって、エルサレムではどうやって搾り取るかが試行錯誤されているようだ。