パレスチナ情報センター

スタッフ・ノート

2008.12.30

政争の具としておこなわれた計画的ガザ戦争

Posted by :情報センター・スタッフ

 ガザ地区への大規模な空爆は、停戦を更新せずにロケット攻撃をしたハマスへの「報復」では断じてない。このことはイスラエル紙の記者でさえも認めている。
 08年12月29日のハアレツ紙の「ガザ作戦でも緩和しないオルメルトとバラクの不和」(アルーフ・ベン記者)によると、「現在のガザ戦争は、エフード・オルメルト(暫定首相/カディマ)とエフード・バラク(国防大臣/労働党首)との緊張関係の陰のもとで遂行されている」。
 作戦の「手柄」をめぐって、作戦開始前の先週からバラクが先走った発言をしてはオルメルトが牽制するという展開があるが、とうとう作戦初日の会見でオルメルトがバラクに激昂したらしい。
 この背景をめぐって、上記記事には二つの説が紹介されている。

 政府周辺では、攻撃の下準備に関して二つの説が語られている。一つめの説は、オルメルト本人が他の政府高官よりも先に自分で、イスラエルがハマスと戦争することになるということを認識し、そしてそれに従って実行したというもの。この説によれば、アシュケロンに6発のロケット弾が立て続けに打ち込まれた後の11月14日に、オルメルトはテルアヴィヴの国防省での会合を招集し、その場でハマスとの衝突は切迫しており不可避であるという点で閣僚たちの同意をとりつけた。オルメルトはイスラエル国防軍に対して空爆の準備を本格的にするように指示し、それがこの27日土曜日にガザ回廊を驚愕させた攻撃となって実現した。
 それに対してバラクは対照的に、こうした結論に達したのは12月17日のことであり、ハマスが停戦を延長する意思はないと表明してからのことにすぎない。オルメルトは、ハマスの停戦にはとくに関心をもたなかったが、にもかかわらず、国防省の高官の方針に従い、シンベト(国内諜報治安機関)の作戦開始情報によって最新の状況を把握していた。
 そしてバラクとの共通の認識に到達してから、オルメルトは一連の閣議でもって、攻撃遂行を支持する政治同盟を形成する方向へ動き出した。最後に沈黙を破ったのはバラクで、24日水曜日のテレビ・インタヴューにおいて、内閣が軍事作戦に青信号を出したと語った。このために、ハマスを騙して油断させておくための方策が必要となり、また、オルメルトはバラクが作戦の手柄を自分のものにしようという野心をもっていると思い激怒したのだ。これが一つめの説だ。

 二つめの説は、バラクがずっと前から、11月のさらに前から、ハマスと対決することを計画してきた、というものだ。そうしてバラクは、軍に対し、準備をして情報収集をして作戦計画を練る時間を与えた。この説によると、攻撃に備える必要から、これまで何ラウンドも繰り広げてきたオルメルトとのあいだの中傷合戦やあるいは無能だという非難の応酬をバラクの側は抑えるつもりであった。

 単純化すると、第一の見方は、オルメルトは国防省の役人にすり寄ったのではなく、自分自身で実質的に作戦を考えたのであり、他方でバラクは政治的主導権を求めていたにすぎない、というものだ。第二の見方は、オルメルトは自分の「遺産」を救い出すことに腐心しており、バラクへの批判はただの感傷である、というものだ。
 歴史の教訓によると、戦争をうまく遂行するためには政府のリーダーたちが仲良くする必要はない。

 あまりにお粗末な話だ。ここには「和平」の一言も出てこない。イスラエル内の政権争い、主導権争いがすべてだ。イスラエルの総選挙前で、連立与党を形成するカディマも労働党もともに沈没する気配は濃厚。お互いに叩き合ってどちらが上に出るかを争っているのか。
 加えてオルメルトは「勇退」が決まっており、その「遺産」を守る?!
 選挙前の駆け引きに加えて、年末年始のゴタゴタで世界の注目が薄いこと、アメリカも政権交代直前である種の空白期間であること、これらも合わさり、ますますイスラエルの空爆の「非人道性」が浮き彫りになってきている。