パレスチナ情報センター

スタッフ・ノート

2010.06.02

こんなときは、サラ・ロイ『ホロコーストからガザへ』を読もう

Posted by :早尾 貴紀

 ガザ地区に向かった支援船団に対する、イスラエル軍の襲撃・虐殺事件。
 この公海上で行なわれた民間船に対する攻撃と拿捕は、無法者による海賊・拉致行為である。このこと自体は疑いない。
 だが、そのことだけを問題視するのでは不十分だ。そもそも、なぜガザ地区はかくも長期にわたって封鎖されているのか。今回エジプト政府が、ガザ地区と接するラファ境界を「開放」したと報じられている。が、これは「開放」でもなんでもない。食糧・医療品・資材の搬入と、重病患者の出国を認めたにすぎないのであり、これまでそれさえも阻止されていたということ自体が問題視されなくてはならない。

 こんなときこそ、イスラエルのガザ地区支配の本質について振り返る必要がある。目先の不法行為を非難するだけでなく、イスラエルの占領政策そのものに対する批判にまで進まなくてはならない。
 いま日本語で読めるガザ地区占領をきっちり分析した書籍はこれ一冊しかない。

 サラ・ロイ『ホロコーストからガザへ――パレスチナの政治経済学』
(岡真理、小田切拓、早尾貴紀=編訳、青土社、2009年、2600円)


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 真の意味でのガザ地区開放のためにも、これを読もう。