『ルート181』 シーン解説
下線のついた部分から、そのシーンに関する解説やコラムにリンクがあります
【南部】(85分):
イスラエル南部、ガザに近い港湾都市アシュドード〜ガザとの境界地域付近
*はアラビア語での地名
- アシュドード:
海岸の工事現場で語るユダヤ人現場監督。ひとりはモロッコ出身、もうひとりはクルディスタン出身だと言う。中国からの出稼ぎ労働者がたたずむ。測量をしているのはイスラエル国籍のパレスチナ人青年たち。親の故郷の村での虐殺は知っているが、自分はイスラエル人だと言う。米国への移住を語る。*(ナビ・ユーニス) - ガン・ヤブネ:
道路脇のスタンドの女性が、アラブ・パレスチナ人に対して持っている印象について語る。*(バルカ) - マスミーヤ*:
この場所に数軒だけ残っているパレスチナ人(イスラエル・アラブ)の家のひとつ。母と息子が立ち退きを迫られている今の状況を語る。ここは現在ヘブライ語で、ブネイ・レエムと呼ばれている。 - ガソリンスタンド脇の店:
戦争の写真で溢れている。店の主人であるユダヤ人女性(イエメン系だとプロダクション・ノートにはある)が戦争は嫌いだが、写真に囲まれていると安心だと語る。 - キリヤット・マラーヒ:
イラク系ユダヤ人男性の雑貨店。移住してきた50年代当初を語る。*(カスティーナ) - シャフィール:
住宅建設中のモシャブ(共同組合村)。ハンガリー系ユダヤ人の親子は息子がハイテク技術者だと自己紹介し、パレスチナ難民の帰還権について語る。父親は昔の様子を覚えている。*(ソワフィール) - キブツ・ヤド・モルデハイ:
キブツ(入植村)の記念館。48年の闘いの様子が展示されている。ウクライナ出身の老人が移住当時を振り返る。 - ガザ地域の検問所:
ガザに入る物資のトラックが並んでいる。一般市民の立ち入りはほとんど許されていない。 - 有刃鉄線の工場:
特許を取っている特殊な有刺鉄線の工場。 - ニル・アム貯水池:
ユダヤ基金によって建てられた貯水池を見学に来ている家族連れ。水は奪い合いだと語る。ガザが見えている。 - ニル・アム「水と安全の博物館」:
ガザ北部を望む。元ハガナー(イスラエル国防軍の元となった軍事組織)司令官の館長が入植当時と分割決議の裏話、水プロジェクトの夢を語る。 - ベイト・ハヌーン*:
イスラエルの軍事基地。撮影禁止。フェンスの向こうにはガザ。 - キブツ・ニル・オズ:
「ホワイトハウス」と呼ばれているアブシタ一族の家をギャラリーにしようとしているキブツの男性。元の地名は残すべきだという。ガザとの境界に沿って昔の村の跡をドライブする。*(ヒルバット・ナイーム) - エレズ:
夕暮れのエレズ検問所。ガザからイスラエルに出入りできる唯一の場所だが、外交官や国連関係者などの限られた人しか通過を許されない。パレスチナ人は労働許可証をもらった者などがわずかに通過を許されている。 - フルダ:
イスラエル人の婚礼。壁に描かれた肖像の男がカメラをみつめている。
【中部】(107分):
ロッド〜エルサレム周辺・ラマッラーなどパレスチナのヨルダン川西岸地区
*はアラビア語での地名
- ロッド統合センター:
エチオピアからの新移民を受け入れ、ユダヤ教の儀式を行っている。 - ロッド市庁舎前:
「共生」を意味するアラビア語「タアユウシュ」のメンバーが、パレスチナ人(イスラエル・アラブ)の家屋破壊に反対し、集会を開いている。 - ロッド市議会:
「違法」建築を巡っての議論。違法建築は壊されるべきだとするユダヤ人議員に対して、一人だけいるパレスチナ人(アラブ系)議員が建築許可が下りない現状を訴える。ユダヤ人議員はアラブ系とユダヤ系の人口比率を持ち出す。 - ロッドの「ゲットー」:
政治犯だったパレスチナ女性が家屋破壊の危険や、獄中での体験を語る。隣人のイラク出身ユダヤ女性は、ユダヤ系がこの地区から去っていったことを語る。床屋のパレスチナ人男性は、この街がまだリッダと呼ばれていた1948年に起きた出来事を語る。*(リッダ) - アイン・ヤルカ:
キブツ・ゲゼルへ行く道で14年前の移住を悔やむロシア系ユダヤ人に会う。ユダヤ国家基金の世話でやってきたというベドウィンらしき青年が放牧をしている。兵役では国境警備兵になりたいと言う。 - ゲゼル:
キブツでは米国カンザスから来たクリスチャンの一団がイスラエルとの友好を記念し、オリーブを植樹している。*(アブ・シューシャ、アブ・クバーブ) - クファル・ビヌーン:
彫刻家の作業場。ホロコースト生還者の母親がくぐり抜けた悲劇を彫刻家は語る。 - フルダ・キブツ:
ユダヤ国家基金の指導員が、どのようにイスラエル国家建国のために土地を購入したかを語る。*(コフル・フルダ) - カランディア検問所*:
エルサレムからヨルダン川西岸地区の北部に行く場所にイスラエル軍が作った検問所で、兵士の態度を問題にする。 - 軍事裁判:
自爆犯も含むパレスチナ人青年たちの裁判にやってくる親族。 - 検問所:
ひとつの検問所では通過が許されない。もうひとつの検問所では、イエメン出身の兵士カップルに会う。 - エルサレム近郊(アブ・ディース*周辺):
NGO事務所。イスラエルによる入植政策を説明するパレスチナ人。街の道路の真ん中にエルサレムとその周辺の街を隔ているための隔離壁(分離壁)──この段階では仮のもの──が出来始めている。 - アブ・ディース*:
東エルサレムにあるパレスチナの村。自爆をした青年の実家がイスラエル軍によって爆破されている。破壊された家を片づける子どもたちと、爆破までのことを語る家の主。 - 道路封鎖:
エルサレム周辺でイスラエル軍が全面封鎖をしている。カメラに自ら話をしにくるイスラエル兵。 - ラマッラー*:
パレスチナ自治政府の議長府がある街には人影がない。外出禁止令下に置かれた街の交差点には、戦車が止まっている。病人を乗せたパレスチナ人の車がやってくる。兵士は愛読書について語る。 - ベイト・ジャラ*:
ベツレヘムとベイト・ジャラの間。道路封鎖のなかを結婚式に向かう人々。花嫁の一家は車で到着する。
【北部】(85分):
ローシュ・ハアインから建設中の隔離壁の横にそって北上。レバノン国境まで
*はアラビア語での地名
- ローシュ・ハアイン:
ミグダル・ツェデクとヘブライ語で呼ばれている村の廃墟を前に犬を連れたイエメン系ユダヤ人が移住当時や隣人とのいさかいを語る。*(マジュダル・サディークまたはマジュダル・ヤーバー) - カルキリヤ*:
隔離壁の建設現場に近くで、遺跡を発掘している。発掘をしているのはパレスチナ人(イスラエル・アラブ)、監督はユダヤ人。壁の建設現場ではパレスチナ人(イスラエル・アラブ)のトラック運転手が、仕事について語る。壁で囲まれつつある街に帰ろうとするパレスチナ人労働者のグループ。 - ナブルス*:
外出禁止令下に置かれたナブルスを目指して、食料を携えた「タアユウシュ(共生)」のイスラエル人たちが軍事封鎖を越えていく。 - ビル・シーカ:
イスラエル内のアラブの村でオリーブ摘みをする人々。ラビ最高議会からコシェル[ユダヤ教の食事規定]認定のために役人が訪れる。パレスチナ人の老人は48年に引かれた境界についての体験を語る。 - サリード近く:
戦闘機が基地に戻っていく。夕暮れにジョギングするユダヤ人はドイツから40年代に移住してきた母親の当時の暮らしを語り、現在のイスラエルの政治を語る。 - エズレル渓谷:
キブツの中の開拓記念館。子どもたちに入植の歴史を語る歌を教えている。大人たちも説明を聞いている。 - レヴィの森:
子どもたちがガードマン付きでハイキングしている。父親が米国から移住してきたというユダヤ人の若者はそこはかつてルビアだったと聞かされるが、聖書にでてくるレヴィから来ているだろうと言う。彼の名前はレヴィ。*(ルビア) - セジュラ:
セジュラ博物館の館長が、写真を見せながら、ガリラヤ征服の拠点となったこの場所を語る。30年代に撮された写真には、アラブの村とユダヤ移民の農場が写っている。*(シャジャラ) - トゥラーン:
シャジャラ村の住民だった女性が孫世代の子どもたちを前に村で48年に起きたことを語る。 - ヌジェイダット:
闘いの記念碑の前で、パレスチナ人(イスラエル・アラブ)の子どもたちが、自分たちのアイデンティティについて議論する。 - ファルード:
北部のキブツ。ロシアから両親がやってきたテルアビブ生まれの老人が48年に自分が参加した「マタテ(箒)作戦」を語る。 - クファル・シャマイ:
開拓者の挫折と夢を綴った村の碑文を読むユダヤ人の少女。61年にモロッコから移住してきたユダヤ女性は移民活動で自分が果たしていた役割を話す。 - メロン:
シモン・バル=ヨハイというユダヤ教のラビの墓地がある聖地。バル=ヨハイはユダヤ教神秘主義カバラーの祖とされる。若い信徒が踊っている。 - シェフェル:
モロッコとチュニジアから移住してきたユダヤ人夫婦がイスラエルでの人生について語る。 - レバノン国境